
クリステン・スチュワート、ロバート・パティンソン、テイラー・ロートナー主演の『トワイライト・サーガ』シリーズは、父親と暮らすためにワシントン州のフォークスという小さな町に越してきた17歳のベラ・スワンが、自分を避けようとしているかのような青白い謎のクラスメート、エドワード・カレンに惹かれる物語だ。しかし、エドワードが自分たち家族はヴァンパイアだと打ち明けても、お互いに惹かれ合う気持ちには逆らえない。しかも厄介なことに、ベラの親友であるジェイコブ・ブラックはヴァンパイアの宿敵であるオオカミ族だった。
小説と映画はまさに世界的な一大現象を巻き起こした。2008年11月にシリーズ第1作目の『トワイライト〜初恋〜』が全米公開されてから4年、続編の小説はいずれもベストセラーランキングのトップを飾り、映画の方もそれぞれにアメリカのみならず、世界各地で大ヒットを飛ばす。映画『トワイライト・サーガ』シリーズはこれまでの4作で、全米で10億ドル以上、世界全体では25億ドル以上の興行収入を上げている。アメリカだけでDVD/ブルーレイの出荷数は3千万枚を超え、映画用のツイッターのアカウント、@Twilightは映画のアカウントでは初めて100万人のフォロワーを達成した。
シリーズ全作の製作に当たった、プロデューサーのウィック・ゴッドフレイは「1作目は新しい愛、2作目は喪失、3作目は選択、4作目は結婚と家族への挑戦、そして最後の5作目は家族を守ることを描いている」とまとめる。
本作では、ベラがついにヴァンパイアになったことを知り、そのことで3人の主人公、ベラ、エドワード、ジェイコブが、それぞれに愛する人のために戦わざるを得なくなるという、その奮闘ぶりが描かれる。
「5作目の本作は、まさに4作目が終わった瞬間から始まる」と『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーンPart1』と同時に『Part2』のメガホンを執ったオスカー監督、ビル・コンドンは語る。「これまで4作のテーマ曲を序曲にして、大いに盛り上げたオープニングにすることにした。それぞれの作曲家のメロディーと共に、1作目の雰囲気に舞い戻る。広大な風景の映像に、ベラの体内を毒が回る映像がインターカットで入る。そしてベラが目を開ける。最初は星がきらめく抽象的な画像にしか見えない視界の焦点が合ってくると、そこにいるのはエドワードだ」
コンドンは語る。「『Part1』と『Part2』の間が開いたことで、ベラがヴァンパイアになったという事実にすんなり入っていける。ベラは新たな人生を歩み始める。全く違う映画だ。ここからはもうヴァンパイアなのだから。シリーズ5作目で、唯一残った人間は、ベラの父親、チャーリーだけになった。あとは全員、不思議な生物というわけだ。『Part2』は別体験になる。そのことに興奮したよ。同じ小説から違う映画を2本作るチャンスに恵まれたんだ」
「ベラがヴァンパイアとして目覚める瞬間から、映画はスタートする」とプロデューサーのゴッドフレイも繰り返す。「過去4作で描かれていた新生ヴァンパイアの変化を、今度はこれまで成長を見届けてきた我らがベラが体験する。映像的には、全体像を見せると同時に間近で見ているような細部まで表現し、音もすべて聞かせて、ヴァンパイアになる速さや力強さを伝えるようにした。すぐにベラが目覚める。エドワードの彼女への愛は変わらない。レネズミも生きている。でもベラはたちまち抑えがたい喉の渇きを感じる。そして初めての『狩り』に乗り出す」
原作者でプロデューサーも務めたステファニー・メイヤーはこう語る。「今のベラは、すべてが変わったことをはっきり感じている。肉体的なことが何もかも急に楽になって、超能力を身につけたかのようなの。と同時に、ものすごい喉の渇きと折り合いをつけないといけなくなる。でも、そうなることは分かっていた。彼女は私の小説の中では、転生する前から『ベジタリアン』になると決めていた初のヴァンパイアなの。だからこれまでの新生ヴァンパイアとは違って、決して人は殺さない。ベラは喉の渇きがひどいことは分かっていて備えている。だから多くのヴァンパイアのようには苦しまない。強い意志と覚悟していたおかげで、ヴァンパイアになってもうまく対応できるの」
ベラはカレン家の家に戻り、尋常でない娘のレネズミに初めて会う。そこで知るのだ。娘には特別な才能があり、異様な速度で成長し、ジェイコブと特別な絆があることを。
ジェイコブは今でもベラをとても大事に思っているが、今の優先権はレネズミだ。「小説の中で一番好きな場面は、ジェイコブがベラの娘と運命のパートナーであると『刻印』されていることを明かすところよ。おそらく観客も同じだと思うけど、ベラは『冗談でしょ?』という反応を見せる。その後、ジェイコブをたたきまくるの」とローゼンバーグは笑う。「ベラが子供を守ろうとする母親であり、すごいヴァンパイアであることを示す面白いシーンよ。観客はジェイコブの状況を理解し、受け入れ始める」
前作の『Part1』では、ベラとエドワードが自分たちの家族を作ることを中心に描いていたが、『Part2』では、その家族の安全を守ることに焦点が当てられる。「前半はヴァンパイアになったベラの新しい姿を描き、娘も初登場する。ベラ、エドワード、レネズミの家族は田舎に家を構え、一緒に新生活を楽しんでいる」とゴッドフレイは語る。「レネズミが禁断の『不滅の子』だとヴォルトゥーリ族に誤解されたところから、危険が襲いかかる。ヴォルトゥーリはカレン家に対抗する勢力を集め始める」
「不滅の子」というのは、人間からヴァンパイアに転身したヴァンパイアの子供で、喉の渇きを抑えられなくて、秘密を黙っていることもできない。デナリの3姉妹ヴァンパイアの1人がヴォルトゥーリにカレン家の子供について知らせる。「イリーナが遠くからレネズミを見て誤解したことから、映画は全く違う様相を帯びてくる。世界中からヴァンパイアが集結して戦いを繰り広げる壮大なアクション映画になるんだ」とコンドン監督は語る。
「カレン家は再び危機を迎える。でも今回は問題が大きい」とメイヤーは語る。「これまでは、ベラが狙われ、カレン家は彼女を守るために危険を冒していた。でも今度は、カレン家そのものが狙われているの。全滅させられるかもしれない状況よ。ヴォルトゥーリ族が全員を殺そうとやって来る。カレン家にはなすすべがない。逃げることも隠れることもできない。死刑を言い渡されたの」
メイヤーはさらにこう語る。「カレン家は罪を犯してないので、どうしてこんなことになるのか、疑問に思っている。ヴォルトゥーリはカレン家が許されない罪を犯したと本気で信じているのだろうか。それともこれは何をしたかに関係なく、アロが対抗心から下したことなのだろうか。この事態を切り抜けるために、カレン家はできるかぎりの仲間を集めて、ヴォルトゥーリにレネズミは彼らが考えているような子ではないと伝えようとする。ヴォルトゥーリの動きを緩められれば、説得できるのではないかと思ったのよ」

このシリーズ最終章では、世界各地から多くのヴァンパイアがワシントン州のフォークスに集まってくる。レネズミの本性を知るためだ。『Part1』のベラとエドワードの結婚式で初登場したエリエザル役のクリスチャン・カマルゴ、カルメン役のミア・マエストロ、ケイト役のケイシー・ラボウ、イリーナ役のマギー・グレイス、ターニャ役のマイアンナ・バーリングが、今回もカレン家と同じ「ベジタリアン」のいとこたち、デナリのヴァンパイアを演じる。デナリの一族で今回新たに加わるのは、母親のサーシャとヴァシーリーを演じるアンドレア・パウエルとビリー・ワゲンセラーで、「不滅の子」というものを紹介するロシアの村の回想シーンで少し登場する。
ヴォルトゥーリへの証人として呼ばれる新たなヴァンパイアには、アメリカの放浪者、ギャレット(リー・ぺイス)、ヨーロッパの放浪者、アリステア(ジョー・アンダーソン)、エジプトのアムン(オマー・メトワリー)と息子のベンヤミン(ラミ・マレック)、彼らの仲間のケビ(アンドレア・ガブリエル)とティア(アンジェラ・サラフィアン)、ルーマニアのステファン(グーリー・ワインバーグ)とウラジーミル(ノエル・フィッシャー)などがいる。他にも、アマゾンの一族、セナ(トレイシー・ヘギンズ)やザフリナ(ジュディス・シェコーニ)も登場。アイルランドの一族には、マギー(マーレイン・バーンズ)、シボーン(リサ・ハワード)、リアム(パトリック・ブレナン)、アメリカの一族にはメアリー(トニ・トラックス)、ランドール(ビル・タングレイディ)、ピーター(エリック・オドム)、シャーロッテ(ヴァロリー・カリー)、先住民のティクナ族のヴァンパイアと人間の混血であるナウエル(J・D・パルド)とおばのフイレン(マリサ・クイン)もいる。
「カレン家は事態を進めるために世界中からヴァンパイアの仲間を呼び寄せる。それが法廷の裁判のようなものなのか、全面的な戦いなのかは分からないが、おそらく両方の面を持っているだろう。だから、いろんな準備を整え、味方を集める」とマイケル・シーンは語る。
「『Part2』では、新しいヴァンパイアが30人以上登場する。全員を紹介できる時間はわずかしかないので、物語を語る上で重要なヴァンパイアを前に押し出さないといけなかった。でも全員その場にそろっている。誰も省いてはいないわ」とローゼンバーグは語る。「本ならたっぷり紙面を割いて、それぞれの生い立ちをじっくり描くことができる。でも映画のスクリーンでは即座に伝えなければならない。でも映像の助けを借りて、1章かけて言葉で語り尽くすことを1枚のカットで伝えることができる。難しいけれど、今回の脚本で面白かったのが、この新しいヴァンパイアたちを紹介する部分よ。ギャレットはとても面白く登場させたんだけど、とっても楽しかったわ。それにアリステアの描写も気に入っている」
ゴッドフレイはこう語る。「彼らの多くは、全編を通して披露できるような能力は備えていない。ベンヤミンは火を出したり、水を動かしたり、元素に働きかけることはできる。ケイトは肌に電気を通すことができる。もちろんアロにはご承知の通り、ジェーンとアレックが付いている。アレックは霧をかけて、相手の感覚を鈍らせ、何も見えなくしてしまうことができる。この相手の機能を奪う能力は、一度に1人しか痛みを与えられないジェーンの能力よりは強力だ。『Part2』では、ヴァンパイアの能力がすべて披露され、彼らの世界の全容や人間の生来の力がヴァンパイアになった後もさらに目覚めることも分かる」
「物語の構造で面白いのは、新しいヴァンパイアのほとんどが、第2幕に入るぐらいまで紹介されないところだ」とコンドンは語る。「それぞれに自分を明らかにする瞬間があって、それから戦いの場に出て、終わる。例えば『ロード・オブ・ザ・リング』のようなシリーズなら、シリーズ全体か、少なくとも複数の作品にも渡って出てくる登場人物を集めるだろう。それだけに、とても大事なシーンだった。俳優の方も、それぞれが登場する瞬間があるから、そこで瞬時に自分のキャラクターを伝えなければいけないと感じていた」
「それぞれの監督に新しい俳優陣を紹介するチャンスがあった。(1作目の)キャサリン・ハードウィックはカレン家とベラの家族、(2作目の)クリス・ワイツはヴォルトゥーリ族とオオカミ族、(3作目の)デヴィッド・スレイドはニューボーン集団とキラユーテ族、そして今回は世界のヴァンパイアだ」とコンドンは語る。「おかげで典型的なヴァンパイアを集められた。子供の頃から吸血鬼が大好きでね。今回、イギリスの名優、クリストファー・リーのような吸血鬼、『ピラミッド』(80)に出てくるエジプトの吸血鬼、ベラ・ルゴシが演じたような本家本元のルーマニア、トランシルバニアの吸血鬼、さらにアメリカ版の驚きの吸血鬼を登場させた。それが特別な楽しみだった」
「僕はよく理解していなくて、(原作者の)ステファニーから言われたことは、ほとんどのヴァンパイアは何世紀も生きているということだ。当初、新しいヴァンパイアのキャスティングは、年齢の面で新たに編成し直すチャンスになるかもと思っていたが、『トワイライト・サーガ』の世界では、30歳以上は禁じられていた」とコンドンは笑う。
「何カ月も撮影していて、すべてのヴァンパイアが初めてどう交わるのか、見ていて面白かったよ。最初はそれぞれの一族内で固まって、まだヴォルトゥーリ側とカレン家側で何となく溝があるようだった。でも土曜の夜遅くまで一緒に過ごす機会があり、そこで境界線を越えたら後はみんな友達だよ」とコンドンは笑う。
ロバート・パティンソンも笑う。「何年も同じキャストでやってきたから、今回は70人ぐらい一気に増えて、大きく変わった。すごいことだよ。素晴らしい俳優も加わって、シリーズを締めくくるにふさわしい大作感が出ていて面白かった。『トワイライト・サーガ』シリーズは本当にステキな人たちを呼び寄せるようだ」
「新しいキャストが『トワイライト・サーガ』ファミリーに加わってくれるのは見ていて楽しかった。このシリーズを始めた時、僕たちはいつも一緒に夕食を囲み、撮影が終わった後も一緒に遊んで結束を固めた。そして2年目になると、新入生が入ってくる。オオカミ族の連中だ。そうやって作品を重ねてきて、今じゃ古株だよ。カレン家のメンバーはみんな疲れちゃって、もう出かけやしない」と(カーライル役の)ピーター・ファシネリは笑う。「新しいメンバーは、よくつるんでるよ。昔の僕たちみたいにね。懐かしいね。今は夜になるとぐったりして、部屋でおとなしく休んでるから」
(エリエザル役の)クリスチャン・カマルゴはこう明かす。「カレン家の連中はみんなイタズラ好きだ。信用できないね。あのグループといると笑いが絶えない。ヴァンパイアを演じている時に、雪の上で滑って転んだりする。ヴァンパイアなのにあり得ないだろ。おかしくてたまらないよ。そんな笑える話がひっきりなしに起こる。その中心人物はピーターだね」
「新しいヴァンパイアはこの作品にいい味を加えたと思うわ。笑いが増えたし、みんな料理が上手だから、助かったはずよ」と(カルメン役の)ミア・マエストロは笑う。「スコーミッシュで滞在してた部屋にはキッチンがあってね。毎晩、シェフの戦いよ」

コンドンは語る。「2010年のクリスマスの前には、もう撮影に入っていたのに、そのシーンが劇場のスクリーンに流れるのは2年後なんだから変な感じだったよ。撮影時間は限られているから、かなり大がかりなシーンはまず舞台のように、1日がかりで俳優と1つひとつ、演出をしていった。大半が抽象的なものだったからリハーサルはとても貴重だった。あんなに進行が複雑なシーンは、やったことがないよ」
そこでは複雑なスタント演技が繰り広げられた。「戦いのシーンのために、ファイトコーディネーターのジェフ・イマダをルイジアナに呼んだ」とプロデューサーのジェフリーは語る。「彼は経験豊富で、アクション映画の『ボーン』シリーズも担当している。とても礼儀正しくて、俳優ともうまくやってくれる。彼のおかげで、これまでよりアクションシーンが向上した」
ヴァンパイアの戦いは人間のよりも力もスピードもある。「俳優を飛ばせるのに何がふさわしいか、どうすれば体が不自然に見えないか、何をやりたいのか、いろいろ考慮した」とイマダは語る。「かなり大がかりな動きなので、気圧式や歯止めを使った装置を使いがちだが、長い距離を動かし、自然な動きに見せたいなら、ウィンチ(巻き上げ機)を使う」
そのアクションが披露される前に、アリスが平原に来て、アロに彼の運命を見せる。「アリスは勝つために戻ってくる」とアシュリー・グリーンは語る。「彼女は未来が見えるから、有利なの。戦いのシーンはとても楽しかったわ。ジャスパーを含め家族の何人かが未来像の中に見えなくて、アリスは危険で怖い存在になる。少しキレてるの。それは私が断言するわ。アリスのスタントを自分でできてうれしい。スタントのシーンがあると分かると、ジムに通って、トレーナーとその離れ業ができるように訓練するの。私は武術をやってたから、やらせてもらえることなら何でもやるわ」
アシュリー・グリーンのスクリーン上のパートナー、ジャスパー役のジャクソン・ラスボーンもスタントを楽しんだ。「自分がアクションをするなんて想像もできなかったが、大好きだよ」と語る。「昔テコンドーをやっていたことがあって、今も少しカンフーや殺陣を習ってる。スクリーンで見るのが楽しみだよ。ジェフ・イマダや彼のスタッフとも密接に仕事をしたけど、スタントマンの人たちは本当にいい人ばかりで楽しかった。動きが素晴らしくて、そんな彼らにトレーニングを受けられてよかったよ。僕らの多くは1週間に6日は、撮影の第1班と第2班を行ったり来たりして働いた。ファイティングシーン、満載だよ」
ロバート・パティンソンもこう語る。「最後はいきなりアクション映画になったね。僕も少しだけスタントをやった。例えば、ワイヤーをつけて飛んだけど、とても楽しかったよ。それから普通の戦いや、相手の頭をもぎとることもたくさんやった」
農業センターの門のある敷地の中に、戦いのシーンを支えるための「ヴァンパイア・キャンプ」を作った。ゴッドフレイは語る。「主要キャストから背景の証人役やスタントマンを含め、100人近い出演者が毎日、1〜3時間かけてそれぞれのヴァンパイアに変身した」
「ビル・コンドン監督がワイドショットを撮れるように、どうやったら100人のヴァンパイアを朝、現場に集められるか。それだけの大人数では、全部のトレーラーを使っても間に合わない」と共同製作のビル・バナーマンは語る。「ヴァンパイア用のメーク、ヘア、カツラ、コンタクト、衣装、小道具、アクセサリー、ケータリング、サポートスタッフ、警備、それに付随する諸々のスペースを用意しないといけなかった。裏方はどこに電話を置けばいいんだ? セキュリティ上の理由から、スタッフは現場に携帯電話を持っていってはいけないことになっている。写真撮影が禁じられているんだ。32台のトレーラーに加えて、すべての必要を満たせるテント村を作った。何軒もの家に相当する広さだったが、ここに毎日ヴァンパイア家族が集まって、戦いを繰り広げた」
「現場には30人近い衣裳係が詰め、戦いのシーンに出演する様々なヴァンパイアの衣装の世話をした。さらに衣装棚でいっぱいの巨大な洞窟のような作業部屋には何人かの裁縫師が控えていた。現場には2台の衣装トラックがあって、1台は主要キャスト、もう1台は残りのキャラクター用の衣装がぎっしり入っていた」と衣装デザイナーのマイケル・ウィルキンソンは語る。
「ある朝、到着したら、その場所は広大な沼地になっていて、トレーラーまで泳いでいかないといけない状態だった」とマイアンナ・バーリングは語る。「すぐにスタッフが板で通路を作って、トレーラーやテントを行き来できるようにしてくれた」
スタッフは水をくみ出し、ヴァンパイアが手の込んだ衣装を泥の中で引きずらないでもいろんな拠点に移動できるように、高くした板張りの道を作った。「この敷地を上空から見たら、ヴァンパイア用のハビトレイル(パーツをつないでいくハムスターのケージ)のように見えるだろう」とバナーマンは語る。「でも、こうした周りのサポートのおかげで、みんなセットにアクセスでき、物が不足することもなく、撮影に臨めた」
ヴァロリー・カリーはこう語る。「テント村は映画『E.T.』のラストに近いシーンを思い出した。政府の人間が有害物質を絶縁するプラスチックのトンネルを抜けていくシーンよ。まるで宇宙船に乗っているみたいだった。トレーラーの中にいて、急に土砂降りになった時は、小さな潜水艦に乗っているような気がしたわ。夜明け前に到着して、日が暮れてから帰るような日々だった」
「俺たちのベースキャンプは時々、ソーセージ工場のように思えたよ。ヘアをやってもらったら、次の工程へ行く。コンタクトレンズをはめてもらったら、また次の工程へってね」とラミ・マレックは語る。
「テント村は広く、すごく青白い人たちが歩いている以外は軍のベースキャンプのようだった」とノエル・フィッシャーは語る。「あれほど広い現場には行ったことがないよ」
「中央の駐車スペースは移動サーカスのようだったわ。トレーラー車やテントやトラックで取り囲まれていてね。それに巨大な広場に向かって通路が伸びている。そこを人間とは思えない突飛な衣装を着た人たちが歩き回ってるんだもの、サーカスだわ」とケイシー・ラボウは笑う。
「道路標識も『エメラルドシティ』、『ヴォルトゥーリの道』、『カレン通り』、『イエロー・ブリック・ロード』、『第9区』といったものよ。あそこに長くいると、だんだん想像力が豊かになってくるの」とラボウは語る。「トレーラーの間の細い路地を歩いていると、いろんな場所で人が集まっている。3、4人で音楽を演奏していたり、ジャクソン・ラスボーンが仲間と歩いていたり、ジェイミー・キャンベル・バウアーがトレーラーの中で大勢の女性たちと面白い音楽を楽しんでいたりね。大学のキャンパスや寮のようだった。廊下を歩いていて、部屋のドアを開けるたびに、それぞれの部屋で違うことが行われているみたいなね」
監督のコンドンは語る。「リー・ペイスを探そうとしていて、ピーター・ファシネリとエリザベス・リーサーのトレーラーの間で迷ってしまった。みんな長く滞在していたから、第二の家のようになっていたよ。エキストラが待機する大きなテントや、彼らに衣装や赤いコンタクトを着ける工場のようなスペースもあった。毎日、大騒動だった」
「ヴァンパイア・キャンプはすごいわ。あそこで仲良くなった友達は、今でもつきあいが続いてる」とトニ・トラックスは語る。「あの現場はすごく盛り上がってたし、友人や家族から離れてバトンルージュにいたから、すぐに仲間の結束が固まった」
マイアンナ・バーリングも同意する。「ヴァンパイア・キャンプは素晴らしい体験だった。サマーキャンプのような感じかしらね。かなり度を越えていて、イタズラもいっぱいで、めちゃくちゃ楽しかった。親にみんなを家に連れて帰ってもらいたいくらいにね」
「みんな仲良くなって、独特の体験だった。1日24時間一緒だったの」とヴァロリー・カリーが語る。「交通手段がないから、大人に車で連れてってもらわないかぎり、どこにも行けない」
その体験は撮影現場を離れても続いた。「バトンルージュの繁華街にあるヒルトンホテルを完全に乗っ取ってたね。ロビーを歩けば、誰かしか出演者に遭遇する。孤独だと感じるなら、エレベーターから出た途端に解決だよ」とノエル・フィッシャーは語る。「みんなでつるんで、お互いのオーディションテープ作りを手伝ったりした。90人の大家族のようだったね」
「ニューヨークやロサンゼルスなら、仕事が終われば家に帰る。ここは旅公演に出ているようなもので、ここが自分の世界なの」とリサ・ハワードは語る。「新しい親友もできたわ。もし退屈したら、ホテルのバーにでも行けば、誰かがいる」
「大所帯のキャストには、新しい俳優もたくさん加わって、それぞれのエネルギーをもらえるいい機会だった。特に、一緒に生活して、バトンルージュを乗っ取って、町を楽しんで、仕事して、一緒に遊んでね。いろんな個性の人や、キャリアが様々な人と交流できて、いい体験だったわ」
ビル・タングレイディは語る。「週末には何度もニューオリンズまで出かけて、お互いに楽しめることを探したりした。誰に対しても寛大な雰囲気にあふれていて、この作品の力量を感じたよ。こんなビックスケールの映画に出演できることに対して謙虚な俳優たちも多くて、心が洗われた」
「撮影が終わると、真剣なヴァンパイア・カラオケ大会が始まるんだ。声が少しかれてきたから止めないといけなくなった」とクリスチャン・カマルゴは笑う。「かなりはまって、仲間ともべったりだったね。でも変わったヤツが多かった。カメラが回ってない時でも、それぞれの一族ごとに個性が分かれてた」
マイアンナ・バーリングも同意する。「カラオケは最高だったわ。ビリーがホテルの側に見つけた場所だった。ある夜、ミアに簡単な歌だからと説得されて『スイート・ドリームズ』を一緒に歌ったの。いつの間にか歌の振り付けもつけ出したら、まわりも一緒になってやり出して、そのうち大盛り上がりを見せたの。ケイシー、ラミ、ビリー、パトリックも現れて、次の水曜日も同じことをやった。それで、いつしかちょっとしたお決まり行事になったのよ」
撮影現場以外での盛り上がりは、そのまま現場でも続いた。「戦いシーンの撮影の最終日、即興のダンスバトルがあった。元々はリー・ペイスのアイデアで、それがミアやマイアンナに広がり、最後は私にまで広がって、ダンスでカウントを取ってたの」とトニ・トラックスは語る。
「私たち全員が野原に立った最初の週に振り付けが始まった。(役の)カルメンはヴァンパイアとして特別な能力はないけど、ダンスの力があると、リーが冗談で言い始めてね。カルメンはダンスのような動きでヴォルトゥーリを倒していくのよ」とミア・マエストロは笑う。「そのアイデアを楽しむことにしたの。そのシーンの撮影に入ってから数週間が経っていて、みんな疲れて、退屈しかけていた。だからマイアンナとリーも巻き込むことにしたの」
「ヘア専用のトレーラーで振り付けを始めて、トニを呼んだ。彼女はダンスがうまいからよ。彼女がカウントを取って、みんなに振り付けを教えた。とっても楽しかったわ。それまで3週間近く、ほとんど動かないで、じっと立ってるだけだったから。我慢の限界だったの」とマエストロは笑う。「何か体を動かさずにはいられなかった。そう、カルメンはダンスにパワーがあるの」
マイアンナ・バーリングはこう語る。「グリーン幕が張られて、雪とホコリが舞い散る広いスペースに、いろんな一族と立っている毎日だった。デナリの一族はノリがいい。ある日、リーが言ったの。『ダンスでヴォルトゥーリと対決したら面白くないか?』ってね。名案だわ。カレン家側のメンバーを集めて、ランチの時間にダンスを習った。何週間も大変な撮影の毎日だったから、みんな一気に緊張がほぐれたわ」
「男性陣の中には引き込まれるのをビビってる者もいた。ダンスは得意でなかったからね」とラミ・マレックは語る。「でも少しずつ加わっていって、そのうち全員が加わった。ケランやピーターまでね。数回のリハーサル中は、敵に見られないように、ヴォルトゥーリをテントに入れないようにしてたんだ。いわゆるダンスフラッシュモブ(インターネットなどを介して不特定多数の人間が公共の場に突如集合し、あらかじめ申し合わせた行動を取る即興の集まり)のようなドッキリだ。僕らがいきなり踊り出した時は、見ものだったよ。ほとんどのスタッフが知らなくてね。ビルも監督のイスから立ち上がり、輪に加わって飛び跳ねてたよ」
「毎週水曜日、カラオケで歌ってたリズム教育の歌を選んだの」とマエストロは語る。「みんな心から解放されたような、喜びの瞬間だった」
「ヴォルトゥーリにも独自のダンスで返してほしかったけど、見たかぎり、うまくいってる感じはしなかったわ」とトニ・トラックスは笑う。「即興のダンスバトルは最高だった。また近いうちにやりたいわ。キャストもスタッフも一つになった瞬間だったからよ。ビル・コンドンもすごく驚いてた。撮影監督や音響の人も加わってね。その映像は流れるわ」
「かなり前から準備していたはずなのに、内緒で通せたことに驚きだよ」とコンドンは語る。「カレン家側と戦うヴォルトゥーリ側の撮影をしていて、大きくて高いクレーンに広角レンズをセットしていた。するとレネズミ役のマッケンジーが走っていく。どうしてそっちに移動するのか分からなくて、何が起きるんだろうと不思議に思っていた。するとビートが流れてきて、驚きの事態だよ。カレン家側が全員で踊り出したんだ。ものすごく練習を積んだ、面白く、素晴らしいダンスだ。ヴォルトゥーリ側も素晴らしいダンスだと驚いてたよ。感動的で美しかった。みんなの気分を驚くほど盛り上げた」
エリック・オドムは語る。「戦場での最後の撮影で、その瞬間まで、真剣に進めていた。カーライルが『私たちはダンスで片を付けよう』とアロに叫んで完璧な合図を出す。監督がダンスの輪に加わる前に、ちゃんと戦いを挑んでるんだ」
「音楽が流れてきたんだけど、すごくいい音楽だった」とリサ・ハワードは語る。「周りのみんなもはやし立て、監督の顔はやったかいのあるものだった」
ビル・タングレイディは笑う。「僕たちのダンスは、みんなが一つになって『スリラー』のビデオのような形になった。レネズミを肩に乗せて踊ったんだ。退屈してたところに最後はこれで、最高だったね」
「みんなの芝居好きを引き出した体験だったわね」とマーレイン・バーンズは笑う。「サマーキャンプに来て、その週の寸劇を締めくくるものだった」
原作者のステファニー・メイヤーもこういうのは大好きだ。「そよ風にかすかに牛のにおいがして、室内だとそれがないからいいような場所なの。ロケ地は天候もコントロールできない。蛍光の緑の幕は妙にどぎつくて、頭痛がする。室内のセットは本当に難しい。だからこのようなダンスやパーティ好きの楽天的なヴァンパイアだとやりやすいの」
同様に、これよりは規模は小さいが、カレン家の邸宅の撮影のためにカナダにもロケ用のベースキャンプを作った。ただし、ヴァンパイアが踊りを披露できたのはベラとエドワードの結婚式だけだった。